ソフィカルから見える”パリジェンヌ”の肖像

Musée de la Chasse et de la Nature(狩猟自然博物館)で現在開催されている、Sophie Calle(ソフィ・カル)とSerena Carone(セレナ・カロンヌ)の企画展«Beau doublé, Monsieur le marquis! (侯爵さん!)»。

狩猟自然博物館は、貴族の邸宅だった建物に、古代から現代までの人間と動物に関わるコレクションを展示している博物館。常設の展示品もかなり見応えがあります。
この博物館、現代芸術のアーティストのコラボレーションも定期的に行っており、今回は日本でも有名なソフィ・カルの企画展。ソフィ・カルと言えば、とても個人的・私的なストーリーを言葉で綴る作品のスタイルが有名です。

地上階に設置されたホワイトキューブの展示室から、この展覧会は始まります。ソフィ・カルは、2015年に亡くなった彼女の父親と愛猫のSouris(猫ですがねずみちゃんという名前)についてしたためた極めて個人的な言葉を、イメージ、インスタレーションとともに展示しています。
父親がなくなった日の一週間前からの彼の言葉と、墓標と彼女の写真。

«毎晩、病室から出る時、父親の口から聞く最後の言葉になるであろう文言を、注意深く聞き取っていた。
例えば:「他所で」「同性愛者」「お金」
音はなかったけれど唇の動きから:「もう駄目だ」「そこにいるのは誰だ?」「酒」「ヒノキ」
今週月曜日、彼はこう言った:「駄目だ」
火曜日:「娘よ。」「私の娘。」それ以降聞くことのなかった言葉。
水曜日…»

あまりにも生生しく、聞いてはいけないやりとりを盗み聞きしているような感覚に陥ります。彼女が綴るのは、私たちが共感できるように考慮された言葉ではなく、日記よりももっと私的な回想のようなものです。

彼女なりのユーモアを見せることによって、悲しみを上手く消化している作品もありました。

ソフィ・カルが«Pêchez des idées chez votre poissonnier 魚屋さんでアイデアを釣ろう!»という、かつて放送されていたフランスのTVコマーシャルのキャッチフレーズから、実際に魚屋さんのシルバンに、父親が死んだ悲しみを打ち明けるというビデオ。そんなシルバンはソフィに鮭を勧めます。

二階の展示室には、ソフィ・カルの世界感が常設の展示室内を静かに侵食するように散りばめられた小さな作品たち。

その試み自体は興味深いのですが、作品自体はあまり目新しさや驚きを与えるものではないという印象を受けました。

一方、3階の壁一面に並べられたテキストはとても粋で、ユーモアと茶目っ気があって、ソフィ・カルの魅力がたっぷり。展示室のキャプションには「フランスの狩人たち」。1895年から、マッチョな男性がパートナーを募集する三行広告の内容を集めていたとのこと。nouvel observateurから、Meetic(フランスの有料出会い系サイト)、Tinderまで狩猟(chasse)と狩人(chasseur)をかけていて、この博物館にふさわしい作品です。

ソフィ・カルのポエテッィクな私小説のような言葉は、美しくもある一方、少し気取った囲気も感じられます。彼女は郊外のハイソサエティな地区の出身であり、パリジェンヌのアイコンの一人のフランスの女性作家として見られることもあるかもしれません。

Musée de la Chasse et de la Nature«Beau doublé, Monsieur le marquis!»
アドレス:61 rue de Grenelle 75007 Paris
期間:2017年10月10日-2018年2月11日
開館時間:11:00-18:00 (水曜日のみ21:30まで)
閉館日:月曜休館
料金:8€
ホームページ:http://www.chassenature.org/